AWS再入門ブログリレー2022 Amazon Connect編

AWS再入門ブログリレー2022 Amazon Connect編

Clock Icon2022.03.09

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当エントリは弊社コンサルティング部による『AWS 再入門ブログリレー 2022』の25日目のエントリです。

このブログリレーの企画は、普段 AWS サービスについて最新のネタ・深い/細かいテーマを主に書き連ねてきたメンバーの手によって、 今一度初心に返って、基本的な部分を見つめ直してみよう、解説してみようというコンセプトが含まれています。

AWS をこれから学ぼう!という方にとっては文字通りの入門記事として、またすでに AWS を活用されている方にとっても AWS サービスの再発見や 2022 年のサービスアップデートのキャッチアップの場となればと考えておりますので、ぜひ最後までお付合い頂ければ幸いです。

では、さっそくいってみましょう。25日目のテーマはAmazon Connectです。再入門と言いながらDevelopersIOにAmazon Connectの入門ブログが無かったので再入門と言えませんが、ご容赦ください。

Amazon Connectとは

Amazon Web Servicesが提供するクラウドベースのコンタクトセンターを従量課金で利用できます。通常、コンタクトセンターの準備には、電話回線の契約、PBXの機器の用意、IVR機能、ACD(呼分配)、通話録音、モニタリングなどの選定した上で導入することなりますが、Amazon ConnectはAll-in-oneで提供されています。コンタクトセンターの規模に応じたスケールアップ/ダウンが可能であること、他のAWSサービスとの連携できることも特徴として挙げられます。

Amazon Connectの内部アーキテクチャ

Amazon Connectがどのように提供されているのか、2019年のre:Inventで紹介されています。

各リージョンの複数の電気通信事業者とAWS Direct Connectで接続が冗長化されています。複数のAvailability ZoneでSBC(Session Border Controller)およびEC2が展開されています。エージェントおよび管理者は、GUIからS3に保管されている録音データの再生(ブログ執筆時点では、GUIから録音データの再生は2年間)やメトリクスの確認、CCP(Contact Control Pannel)を使って電話応対やチャット対応が可能です。

Amazon Connectでできること

電話番号の取得

電気通信事業者を介さずAmazon Connectから無料通話(0120)や直通ダイヤル(DID)の電話番号が取得できます。

東京はもちろんのこと海外(ブログ執筆時点ではオーストラリア、イギリス、香港、日本、アメリカ合衆国が選択可)の電話番号が取得可能です。注意点としてAWSに申請が必要な電話番号とそうでないものがあります。以前、日本のDIDは申請なしで取得できましたが、現在は申請が必要です。電話番号の取得に関する要件を確認してご利用ください。
既存のコンタクトセンターだと利用中の電話番号を移行の可否が気になりますが、日本ではフリーダイヤルが移行できます。電話番号の移行に関するドキュメントがありますのでAmazon Connect導入前にしっかり確認しましょう。

シンプルな問い合わせフロービルダー

Amazon Connectには、問い合わせフローを設計する専用のフロービルダーが用意されています。コンタクトセンターを運用中のお客様、新たにコンタクトセンターを立ち上げるお客様どちらも容易にノーコードで問い合わせフローを実装できます。問い合わせフローの変更履歴は自動で保存される為、すぐに以前のバージョンに戻すことができます。

問い合わせフローには種類があります。

タイプ 説明
Inbound contact flow
(インバウンド問い合わせフロー)
問い合わせ時に顧客が体験するフロー
Customer queue flow
(顧客キューフロー)
顧客がキューに転送されたときに体験するフロー
Customer hold flow
(顧客保留フロー)
エージェントが保留した際に顧客が体験するフロー
Customer whisper flow
(顧客ウィスパーフロー)
インバウンドコールでエージェントと接続する直前に顧客が体験するフロー
Outbound whisper flow
(アウトバウンドウィスパーフロー)
アウトバウンドコールでエージェントが体験するフロー
Agent hold flow
(エージェント保留フロー)
顧客が保留した際に体験するフロー
Agent whisper flow
(エージェントウィスパーフロー)
インバウンドコールで顧客と接続する直前にエージェントが体験するフロー
Transfer to agent flow
(エージェントフローへ転送)
エージェントへ転送する際にエージェントが体験するフロー
Transfer to queue flow (キューフローへ転送) キューへ転送する際にエージェントが体験するフロー

Inbound contact flowやOutbound whisper flow以外の問い合わせフローは Default xxx xxx という名前のデフォルトフローが用意されていて、インバウンドおよびアウトバウンドの問い合わせフロー内で明示的に設定されていない場合は、デフォルトフローが呼び出されます。デフォルトフローは変更できるのでデフォルトフローを変更するか、新規に問い合わせフローを作成し、インバウンドおよびアウトバウンドの問い合わせフロー内で明示的に設定しましょう。

また、2021年11月にはモジュール機能がリリースされました。問い合わせフロー内の一部の共通化されたフローをモジュールとして作成し、問い合わせフローでモジュールを呼び出せば問い合わせフローの保守効率がよくなります。

問い合わせブロック

問い合わせフロービルダーで利用できるブロックを幾つか紹介します。

音声の設定

問い合わせフローで使用するテキスト読み上げ機能 (TTS) の言語と音声を設定します。読み上げ機能はAmazon Pollyと連携されていてNTTSもサポートされています。日本語(Takumi)でもNTTSが利用できます。

記録と分析の動作を設定

通話記録(録音)およびContact Lensによる音声分析のオンオフが設定できます。通話記録はオンにするだけで自動的にAmazon S3に保存されます。
Contact Lensとは、通話のトランスクリプトや感情などの ML ベースの音声分析を提供し、顧客の問題や傾向を特定します。通話後分析を使用して、顧客のインタラクションの後に、トランスクリプト、感情、およびその他のデータの音声分析を取得します。リアルタイム分析を使用して、顧客のインタラクション中にトランスクリプトや感情分析にアクセスできます。

プロンプトの再生

プロンプトライブラリにある音声ファイルの再生、またはテキストの読み上げ、チャットにメッセージが送信されます。テキストの読み上げは 音声の設定 ブロックで設定した内容で読み上げます。テキストは、音声合成マークアップ言語(SSML)で記述し、Amazon Pollyで変換して読み上げることも可能です。詳細は、Amazon ConnectでサポートされたSSMLタグを参照してください。

AWS Lambda 関数を呼び出す

Amazon Connectリソースがある同一リージョンのLambda関数を呼び出せます。例えばIVRで入力された顧客固有の値をインプットデータとしてLambda関数で処理できます。注意点としてこのブロックのタイムアウトが最大8秒であること、エラーが発生した場合は再試行されます。Lambda関数のタイムアウトではないので注意して下さい。

顧客の入力を取得する

顧客から入力を取得して応答内容を処理します。プロンプトの再生 ブロックと同様、プロンプトを選択(音声ファイル、テキスト読み上げ)します。DTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)では入力された番号でフローの流れを分岐します。Amazon Lexは、Lex botを指定したチャット機能を実装できます。

顧客の入力を保存する

顧客からの入力をコンタクト属性として保存します。 AWS Lambda 関数を呼び出す ブロックと連携して利用することが多いです。保存するコンタクト属性はお客様固有の機密情報になるパターンが多いので エントリを暗号化する で暗号化しましょう。

作業キューの設定

問い合わせの転送先となるキューを指定します。キューまたはエージェントを指定できます。ほとんどの場合はキューを選択するのでエージェントの説明は割愛します。問い合わせがキューに転送されるとRoting Profileに基づき、エージェントと繋がります。キュー、ルーティングプロファイル、エージェントの関係は以下を参考にするとわかりやすいです。

キュー

顧客の問い合わせを転送するキューを用意します。エージェントがアウトバウンドする際のアウトバウンドキューとしてキューを指定するので 外線発信者 ID 番号アウトバウンドウィスパーフロー を設定しておきましょう。アウトバウンドキューとして利用しないキューであれば指定は不要です。

ユーザー

Amazon Connectでは、Amazon Connectで管理するユーザー、既存ディレクトリサービスとの連携、SAML2.0ベースの連携を選ぶことができます。コネクトインスタンス作成時のみID管理を設定できるのでAmazon Connect導入前にしっかり検討、検証しましょう。

ルーティングプロファイル

ユーザーは1つのルーティングプロファイルに紐付けられます。ルーティングプロファイルではCCPで処理できるチャネル(音声、チャット、タスク)を選択できます。ルーティングプロファイルと紐付けるキューを登録できます。各キューの優先度や遅延設定、そのキューで処理できるチャネルの選択など、細かく設定できます。問い合わせフローも重要ですが、ルーティングプロファイルの設計も重要なポイントです。

セキュリティプロファイル

Amazon Connect内の権限はセキュリティプロファイルです。コネクトインスタンス内のGUI、CCPの操作すべてに権限を設定できます。ユーザーは、複数のセキュリティプロファイルを紐付けできます。意図しない操作を許可しないようにしっかり確認しておきましょう。

エージェントステータス

CCP内で設定できるエージェントのステータスです。カスタムタイプのステータスは複数追加できますが、ルーティング可能タイプおよびオフラインタイプはそれぞれ1つです。ステータスの名前は変更できるのでお客様のコンタクトセンターに応じて変更しましょう。また、作成したエージェントステータスは削除できないので CCPで使用可 のチェックを外すなどで表示しないようにしましょう。

エージェント階層

エージェント階層はメトリクスで統計を取る際にエージェント階層を指定して集計できます。例えばA部署全体の統計、A部署の1課の統計を表示できます。また、セキュリティプロファイルの Restrict contact access をチェックするとユーザーが所属するエージェント階層内の問い合わせ情報のみ表示が可能です。

CRM連携

ブログ執筆時点では、SalesforceおよびZendeskと連携できるAWSが提供するコネクターがあります。CRMサービスにCCPが埋め込むことができる為、CRM上の情報や機能と連携しながらAmazon Connectを運用することができます。コネクターはカスタマイズできるのでお客様の環境に合わせてご利用ください。

Amazon Connectでできないこと

できないことも理解しておきましょう。

内線

内線番号という番号が無いため、内線(例えば4桁の番号)はありません。外線発信で特定のエージェントに転送できるような仕組みが必要です。

Access URLの制限

コネクトインスタンスのアクセスURLを制限することはできません。

問い合わせの検索期間

問い合わせレコードの保持期間は、Amazon Connectの仕様として24ヶ月です。以降は検索できずAmazon Connectから通話記録の再生ができません。24ヶ月以上の再生を求める場合は、問い合わせレコードはAmazon Kinesisサービスと連携して問い合わせレコードを出力し、検索、再生できる仕組みが必要です。このあたりの課題を解決するYouWireを採用することで24ヶ月以上の通話記録を確認することができます。デモサイトもあるのでぜひご検討ください。

ユーザー無効化

ユーザーを無効化する機能はありません。ユーザーを削除した場合は、問い合わせの検索時に削除したユーザーでフィルタリングできなくなります。代案としては、何も権限を持たないセキュリティプロファイルを用意し、ユーザーに紐付けることでログインされる可能性はあるけど権限がないので何も参照できない状態になります。ログインが許容される場合は、1案として参考になれば幸いです。

終わりに

以上、『AWS 再入門ブログリレー 2022』の 25日目のエントリ『Amazon Connect』編でした。紹介しきれていない機能や日々のアップデートがあるのでぜひチェックしてみてください。
明日 (3/10) はトクヤマの「Amazon ECS」の予定です。お楽しみに!!

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